蒼空Letter
気が付くと、笹井先生の顔が見えたから病院なんだとすぐわかった。
「あたし・・・発作起こしたの?」
急に話掛けたから少し驚いていたけど、いつもの無表情な顔にすぐ戻った。
「あぁ、気が付いた?そう、発作で見事にぶっ倒れて救急車で運ばれてきたよ」
「発作?そんな感じしなかったけど、何でだろう?」
ベッドから身体を起こそうとしたら看護士2人に押し戻される。
「症状は以前に言ってあるはずだよ?気絶したんだから。だから身体動かさないように!」
「気絶?」
そんな症状あったかな?
ちょっと考えたけど、言われた事があるようなないような・・・。
「彼氏さんでしょ?一緒に救急車に乗ってきたのは。彼、ちゃんと『気絶の発作だと思います』って言ってたよ?」
「ソウちゃんが?・・・え!?ソウちゃんどこにいるの?」
笹井先生は聴診器を耳から外しながら「待合室で待っててもらってる」と言った。
「とりあえず、お母さんいらしてるから話をしてから彼氏さん呼んでもらうからね」
そう言って病室を出て行ったけど・・・。
それって、お母さんとソウちゃんが顔を合わせるって事?
「ちょっと待って!!」
慌てて呼び止めたけど、また看護士に押さえられてしまった。
(じょ、冗談じゃないよぉ・・・)
ウチの仮面家族の存在はバレたくない。
ちゃんと温かいお家で育ったソウちゃんにウチの親なんか恥ずかしくて見せられない。