蒼空Letter
卒業式の朝。
「なーんかあっという間に終わった感じだなー」
幹太くんが制服のネクタイを締めながら言った。
普段ネクタイなんてしてる人はいないけど、こういう「行事」ではしなければいけない。
まぁ、学校指定のダサイベストは誰も着てないし、ブレザーを着るから今日はカーディガンじゃなくみんなベストを着ている。
あたし達もほとんどした事がないリボン型のタイを付ける。
「今日は『卒業コンパ』あるじゃん。あたし飲みまくるぞー!」
明日香が鏡を見ながら気合いを入れている。
飲める人はいいけど、あたしずーっとジュースだなぁとあたしはちょっとつまらないけど。
「あたしも飲んでみようかな・・・」
と呟くと、ソウちゃんを含め3人に『ダメ!!』と怒られた。
昔、フェスで間違えて飲んで酷い目に遭っているから仕方ない。
受験を終えた子のほとんどの髪の色は茶色に戻っていたり、中には前よりも派手になった子すらいる。
明日香もソウちゃんも幹太くんも元々の茶髪にすっかり戻っている。
あたしはずーっと黒髪だけど、この3人が試験の為に黒髪になった時は大爆笑した。
その位、すごく違和感があって、特にソウちゃんが一番笑えた。
一気に子供みたいな感じになって、初めてソウちゃんは幼い顔をしてるんだってわかったから。
「ソウ!ピアス外すの忘れてるぞ」
幹太くんに言われたソウちゃんは眠そうな顔で「いいよ、別に」と答えた。
しばらくぶりの学校で早起きをしたから相当眠たいらしい。
「ほら、卒業生!体育館に集合ー」
やる気のない担任の声でみんなぞろぞろ歩き出した。
今日でこの学校ともさよならだ。