蒼空Letter
卒業式で泣く。
よく聞く言葉だし、事実遠く離れた大学へ行く子は泣いていたけどあたしは全く涙が出なかった。
仲がいい子はみんな地元だし、明日香の大学とは一駅、そしてソウちゃんの学校とは同じ駅だから別に寂しい気持ちは特にない。
ただ、体育館へ向かう渡り廊下を歩いている時、懐かしい気持ちになってソウちゃんに聞いてみた。
「ここでサッカーボールが飛んできて『あぶなーい!』って言われてビックリしたのがソウちゃんとの初めての会話だったんだよ?覚えてる?」
「は?」
ソウちゃんは首を傾げている。
「ソウちゃんがぶつかる前にボールをキャッチしてくれて、『大丈夫ですか?』って声を掛けてくれたの。その時からあたしはソウちゃんが好きだったんだよ」
しばらく考えていたみたいだけど、
「覚えてないよ」
と笑った。
「オレは入学時からルウコの事知ってたけどね。すっげー可愛い子がいるって話題だったから」
「あたしはその時までソウちゃんの事知らなかったけど」
「存在感薄くてすいませんね」
笑いながら頭を軽く叩かれた。
「ま、ルウコはオレには無縁だなーって思ってたからね。まさか付き合うとは思わなかった」
「あたしもソウちゃんと付き合えるなんて思わなかったなー。片思いで終わると思ってた」
そんな会話をしていたらもう体育館についてしまった。