蒼空Letter

卒業式は滞りなく進んで、卒業証書は1組は全員壇上に呼ばれて渡されるけど、2組・・・つまりあたし達のクラスからは名前を呼ばれるだけで、代表者がまとめて受け取る方式になっている。


『柏木 流湖』


呼ばれて「はい」と返事をして立ち上がると写メのシャッター音が色んな所から聞こえてギョっとなった。

周りを見ると、男子も女子もなぜかあたしを撮っている。


(何だこれ・・・)


まだ呼ばれていないソウちゃんを見ると苦笑いしている。


段々恥ずかしくなってきてうつむいてしまったけど、「ルウコ!」という明日香の囁く声に視線を向けた。


「最後なんだからサービスしてあげたら?」


サービスって、何すればいいのかな・・・?


写メの音は後方から聞こえるのがほとんどだ。


『えー、式の最中なので携帯電話はしまって下さい』


誰かわからない教師が言った途端に思い切って後ろを振り返ってみた。


芸能人か!?ってくらいに携帯はあたしに向いている。


(サービスね)


あたしは携帯がたくさん向けられてる方向にピースして「イエーイ!!」と言ってみた。


一瞬、シーンとなったけどシャッター音が次々と鳴る。


それからニッコリ笑顔を向けて壇上の方へ視線を戻した。


何だかあたしの行動が不可思議だったみたいで騒然となったけど、これが本来のあたしの姿。


清楚でも大人しいワケでもなく、気は強い、口は悪い、すぐキレる。でも好きな人の前では滅茶苦茶甘えちゃう。これがあたし。


みんなと同じなんだよ?


みんなと何一つ・・・病気の事以外は変わらない「人間」なんだよ?
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