蒼空Letter

『高柳 蒼』


「はーい」とやる気なくソウちゃんが返事をして立ち上がる。

欠伸までしてるし。

そんなソウちゃんの次の人が呼ばれる一瞬、「ソウちゃーん!」と女の子のデカイ声が響いた。

あたしもソウちゃんも周りのビックリして声の方を見ると、ルミがソウちゃんに手を振っている。

その後ろにはお父さんとお母さん。


(何、一家総出で出席してんのよ!?)


声の相手が子供だとわかるとたちまち笑い声があちこちから聞こえた。


ソウちゃんは気まずそうに頭をかいてからルミに軽く手を振り返した。



「ルミ・・・」


明日香のかみ殺した笑い声が聞こえて、ソウちゃんよりもあたしが恥ずかしくなる。


大体、高校の卒業式に一家で来るなんて有り得ない。


ニコニコ笑うルミを睨むと、「あ、お姉ちゃん!」と今度はあたしを指差した。

さっき名前呼ばれてるんだからいる事くらいわかってるはず。


「ちょ・・っ!やめてよ!」


あたしが小声で言うと今度は『柏木さんの妹?』と別の話題でざわつく。


ルミはさっきのあたしの真似をして「イエーイ!」なんてはしゃいでいる。

そんなルミを珍しそうにみんな写メで撮っている。


「似てるー、可愛いー」って声が聞こえたけど、あんなモノ可愛いはずがない。


写メを撮られてご機嫌なルミがお母さんに「撮られたー!」と言って、ようやくお母さんに怒られている様子が見えた。


(結局何でもいいのね・・・)


携帯を向けている人達を見ながら呆れてしまった。
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