蒼空Letter
マンションに家電が続々と搬入されると、ガランとしていた場所が急に「家」になった気がする。
もう家具は入れてあるから今日からここがあたし達の我が家。
冷蔵庫の位置を業者さんに説明しているソウちゃんを見ると『旦那さん』って思ってやっぱり照れ臭い。
「じゃあ、冷蔵庫はここで。奥様もここでよろしいでしょうか?」
業者の爽やかな青年があたしに向かって言った。
「え?あ、奥様はあたしの事か」
あたしこそ実感がないんだなと改めて思った。
「そこで大丈夫です。後の家電の指示は、ソウちゃ・・・じゃなくて、えーと、あの・・・そこの人?」
そう言うとソウちゃんが「何だよそれ」と呆れた。
「あぁ、すいません。しゅ、しゅ、主人と話してもらえますか?」
(ギャー『主人』だって!!超恥ずかしい!!)
「わかりましたー」青年は笑顔で答えて、またソウちゃんと色々話しをしている。
ソウちゃんは淡々としてるけど『主人』とか言われて恥ずかしくないのかな?
業者さんが帰ると、「コーヒー飲もう」と言いながら、新しいキリンの形の薬缶にお湯を入れ始めた。
キリンの薬缶やら赤の冷蔵庫やらちょっと可愛らしい感じはあたしが『新婚』を強調したくて選んだ物。
色違いのマグカップ(ソウちゃんは何でも青、あたしはピンク)にインスタントのコーヒーを入れて食卓テーブルに向かい合う。
ジーっと見てると「どうしたの?」と聞かれた。
「ソウちゃんは『旦那』とか『主人』って照れないの?」
「多少は照れ臭いけど、そんなのすぐに『親父』に変わるだろ?」
「親父って、この子女の子じゃん。さすがに『親父』は呼ばないでしょ」
あたし達の子供は女の子。
この間の検診の時に聞いてわかった事。