蒼空Letter

あたしには彼に声を掛けるなんて勇気はまるでなくて、こうして同じ授業を選択して、同じ空間にいられるってのが精一杯。


でも、あたしは幸せ。


斜め前のダルそうに欠伸をしていて、そろそろ机に突っ伏して寝そうな彼を見ているだけですごく幸せ。


そっと見ているだけで・・・。



彼がふいに後ろを振り返った。


(え!?)


バッチリと目が合ってしまう。

そりゃそうか、だってあたしはさっきから彼をガン見しているから。



(ど、ど、どうしよう!!)


目が合った彼はキョトンとした顔であたしを見ている。


こういう時ってどうすればいいの!?


頼みの明日香はあたしより後ろの席。


「・・・・」


彼はあたしを見たまま何も言わない。

生唾を飲み込むゴクンという音が自分喉から聞こえる。

心臓も一気にドキドキからバクバクに加速する。


彼が口を開こうとした時、


「ソウ!ちょっとコレ見てみろよ」


彼の後ろの席の男子が彼に声を掛けてしまった。


「え?何?」


彼もその声につられて目線を外してしまう。


あたしは悔しくてギュッと拳を握りしめた。
< 8 / 427 >

この作品をシェア

pagetop