Kiss me prince~意地悪王子と天然メイド~



今日だって、ホントは数少ない休日だったのに…悪いことしたな、俺のわがままで。


「…小野塚、悪かったな」

紗柚菜を車の中へ押し込み、小声で小野塚に謝る。
いつもはこんなこと言わない俺が、突然謝罪したせいか、驚く小野塚。


…そんなに驚くことか?
それとも、俺ってそんなに冷たいヤツだと思われてた?
俺だって、悪いと思えば謝るんだけど……。


「竜哉様、紗柚菜様が大切なのでございますね」

「はっ?」


小野塚からの予想外の言葉に、気の抜けた声が出た。

紗柚菜が大切?
それって、俺にとってって事だよな…?


「…なんで、そう思うわけ?」

そう尋ねると、小野塚は一瞬不思議そうな顔をして、すぐに優しい笑顔に戻った。


「竜哉様…お気づきになられていないのですか?」

「何が?」

「…そうでございますか。では、私から申し上げることはできません」

「は? …なんでだよ」

「それは……。竜哉様自身が気づかなければ、意味のないことだからでございます」


それだけ言うと、小野塚は運転席へと戻ってしまた。

…どういう意味だ?
俺自身が気づかないとって…。

俺以上に俺のことを理解してる小野塚が言うんだから、きっとそうなんだろうけど。
全く意味がわからねぇ…。


「何話してたの?」

「…いや、なんでもねぇよ」


紗柚菜の頭にポンと手をのせ、俺も車へと乗り込む。


猛スピードで頭に血を巡らせて考えるが、やっぱりわからない。
理解できない小野塚の言葉に、今日一日中頭をフル回転させたのは、言うまでもない。


そして、今日の出来事で、やっぱり小野塚はすごいのだと、思い知らされることを俺はまだ知らない。







< 27 / 34 >

この作品をシェア

pagetop