Kiss me prince~意地悪王子と天然メイド~
今日だって、ホントは数少ない休日だったのに…悪いことしたな、俺のわがままで。
「…小野塚、悪かったな」
紗柚菜を車の中へ押し込み、小声で小野塚に謝る。
いつもはこんなこと言わない俺が、突然謝罪したせいか、驚く小野塚。
…そんなに驚くことか?
それとも、俺ってそんなに冷たいヤツだと思われてた?
俺だって、悪いと思えば謝るんだけど……。
「竜哉様、紗柚菜様が大切なのでございますね」
「はっ?」
小野塚からの予想外の言葉に、気の抜けた声が出た。
紗柚菜が大切?
それって、俺にとってって事だよな…?
「…なんで、そう思うわけ?」
そう尋ねると、小野塚は一瞬不思議そうな顔をして、すぐに優しい笑顔に戻った。
「竜哉様…お気づきになられていないのですか?」
「何が?」
「…そうでございますか。では、私から申し上げることはできません」
「は? …なんでだよ」
「それは……。竜哉様自身が気づかなければ、意味のないことだからでございます」
それだけ言うと、小野塚は運転席へと戻ってしまた。
…どういう意味だ?
俺自身が気づかないとって…。
俺以上に俺のことを理解してる小野塚が言うんだから、きっとそうなんだろうけど。
全く意味がわからねぇ…。
「何話してたの?」
「…いや、なんでもねぇよ」
紗柚菜の頭にポンと手をのせ、俺も車へと乗り込む。
猛スピードで頭に血を巡らせて考えるが、やっぱりわからない。
理解できない小野塚の言葉に、今日一日中頭をフル回転させたのは、言うまでもない。
そして、今日の出来事で、やっぱり小野塚はすごいのだと、思い知らされることを俺はまだ知らない。