Kiss me prince~意地悪王子と天然メイド~



なんなのよ。あの変わりようは。
アイツ、俳優にでもなれるんじゃないの?


「…なんか、ムカつく…」


思わず出た言葉に、自分でも驚く。


だって、なんであたしが腹立ってんの?
別に、アイツが誰にどう王子の姿で接してても、あたしには全く関係ないことじゃんかよ。


カルシウムが足りてないのかな?
最近牛乳飲んでないし…。
そのせいか?


女子に囲まれてる桜庭竜哉を見ると、喉の奥の方がキューっと苦しくなる。
昨日から感じるコレは…一体何なんだろう?


そのまま桜庭竜哉は女子のとりまきを連れたまま、あたしとは逆の西棟へ消えてしまった。


雅学園は6クラスあって、A~Cクラスは西棟。D~Fは東棟なんだ。
桜庭竜哉はAクラスで、あたしはEクラス。
だから、学校で会うことはめったにない。



…あっ、しまった!
お弁当わたすのすっかり忘れてた!


あたしの右手には、しっかりと二人分のランチバックが握られていた。

まあ仕方ないか。車から出た瞬間女子に取り囲まれちゃったし…。
近づく隙もなかったしね。


アイツも言ってくれればよかったのに!
自分からお弁当作れって言ったくせに…。


薄情なヤツめっ!!


…ったく、らしくない考え事なんかしてんじゃないわよ!
こっちが調子狂うじゃんか…。



「さーゆっ! おはよー!!」


この声…。
後ろを振り返らなくてもわかる、聞きなれた声。


高めの落ちついた可愛らしい声の主は…。


「ゆーちゃん!」





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