攪恋慕~かくれんぼ~
梅子⑤
退院の日。
母に用意された私服に着替え、家に帰る準備をした。
母に付き添われ、松葉杖を突きながら受付に向かう。
目が見えないのだから、車椅子の方が良いんじゃないかと諭されたが、それは断った。
しかし、母の誘導が無ければ歩く事すら儘ならない状態だ。
人で賑わう広いロビーに到着すると、一人の看護士さんが、僕に声を掛けた。
「高橋……尚輝さんですか?」
「あ、はい。」
「手紙を預かっていますよ。」
「?」
大した入院生活でも無いのに、一体誰だろう…と思いながらも受け取った手紙には、触り覚えのある凹凸。
オニイチャンへ
「…。」
僕は最初の時程驚かずに、まず辺りに耳をすませた。
老若男女、色んな人の声と足音で、ここから特定の人物を捜し出すのは困難を極める。
溜め息を吐くと、封を切り、中に入っている手紙を取り出し読んでみる事にした。
母に用意された私服に着替え、家に帰る準備をした。
母に付き添われ、松葉杖を突きながら受付に向かう。
目が見えないのだから、車椅子の方が良いんじゃないかと諭されたが、それは断った。
しかし、母の誘導が無ければ歩く事すら儘ならない状態だ。
人で賑わう広いロビーに到着すると、一人の看護士さんが、僕に声を掛けた。
「高橋……尚輝さんですか?」
「あ、はい。」
「手紙を預かっていますよ。」
「?」
大した入院生活でも無いのに、一体誰だろう…と思いながらも受け取った手紙には、触り覚えのある凹凸。
オニイチャンへ
「…。」
僕は最初の時程驚かずに、まず辺りに耳をすませた。
老若男女、色んな人の声と足音で、ここから特定の人物を捜し出すのは困難を極める。
溜め息を吐くと、封を切り、中に入っている手紙を取り出し読んでみる事にした。