攪恋慕~かくれんぼ~
「悪戯な行為を僕に平然と出来る人間……あの時、僕の脳裏に家族──妹が過ったんだ。」

梅子は、僕を視覚障害者として、最低限気遣ってくれてはいたが、それ以上過度な扱いはしなかった。

代わりに健常者と変わらぬ対応をしてくれていた。

そう、妹のような扱いが出来る人間が「初対面」だとは思えなかったんだ。

「二つ目、僕が入院した時だ。何故、あの時点で母しか知らない事故の事を聞き付けて、見舞いに来たのか。妹、と言ったが、僕は君の電話番号を誰にも教えていない。まるで梅子が探偵か何かみたいになったようで、すぐに疑ったよ。」

こいつは何かを知っている。

本人か、もしくは繋がりの持つ相手だと。

ここまで話して、相変わらず無言だが、僕は構わず続けた。

「で、次に色々調べてみて……僕が事故に合った現場近く、目撃者が他に居ないか聞いて回ったけど、僕は君の写真を持っていないし、確かめようが無い。……だけどね、必要無いんだよ。『通報者が一人かどうか分かれば』良かったんだから。」

母は病院から、通報を受けて来た。

そして、母はあの時点ではまだ、誰にも事故の事を伝えていない。

だから後から来た人間は、親類でも無い限り、病院以外からの連絡か、「現場を見ていなければ」知る事が出来ない。
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