慟哭の彼方


「彼女は自分の存在を消すことを望んでここに来た」

宣言するようにハッキリ言い放った後、再び涙が白い頬を滑る。

それはマイラスへの贖罪を誓った彼にとって、最も残酷な処罰だった。


「それ以降彼女はここに来ていない。そしてオレたち以外の誰も、彼女の存在すら知らないことになっている」


二度と謝れない。

どれほど言い残したことがあっても、伝えたいことがあっても、口にすることができない。


「あなたの願いを叶えることは、あなたを殺すことになるのかもしれない」

チェルシーが翳る瞳で呟いた瞬間、それまで放心状態だった彼が床に膝を付いた。


そんな、そんな、嘘だろう。

何度も繰り返される同じ言葉が、やけに痛く耳に響いた。


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