慟哭の彼方


リイアが依頼を終えて店を出た直後、入れ替わるようにして1人の青年が店に入ってきた。


赤みを帯びた茶色に、後ろを一部分だけまとめた髪。

アーモンド型の目にくっきりと通った鼻筋は、整った顔としか言いようがない。


「チェルシー!おっ前、また依頼受けたのか!?」

彼が彼女の名前を略さずに呼ぶ時は、決まって機嫌の悪い時だ。


リイアと話していた時の無表情とは打って変わって、魔女――チェルシーはむすっと唇を尖らせる。


「受けた。当たり前だろう」

その顔には、どうしてそんなに怒られるのかわからないという純粋な疑問しか浮かんでいなかった。


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