慟哭の彼方


チェルシーの瞳は暗く、敵意に満ちていた。

客に対して向けるべきではないものを、今までに出したことがないような大声で突き付けている。


「ふざけるな、諦めるな。どうにかしようと思えよ。大声で叫ぶぐらいのことはしてみろよ」

なんて無茶苦茶な要求だろう。

笑ってしまうぐらい辻褄の合わない中に、彼女への想いも彼への想いも含まれていることを知る。


きっと彼が謝って、彼女が笑って、2人が笑顔になって。

それがチェルシーの理想だった。
だけどそれはもう叶わない。

だから彼女は叫ぶのだ。

彼が少しでも幸せになれるだろう方法を、無茶苦茶だと知りながら突き出すのだ。


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