慟哭の彼方
彼女が目を大きく見開き、そして笑う。
やつれた頬に赤みが差す。
それだけでもう、今死んだっていいぐらい悔いはなかった。
「なんだ…そんなことか」
「そんなことって、」
「…とっくの昔に幸せだよ」
アルスと孤児院を抜け出したあの日から。
その声はぼんやりと耳に届いて、でもうまく理解できなかった。
カサカサと乾いた唇が、自分の唇に触れる。
涙をこぼしても許されそうな笑顔に、精一杯の意地を張って押し留めた。
「大好きだ、アルス」