慟哭の彼方
その様子にただ事でない空気を感じ取ったチェルシーは、彼女を落ちつけようと椅子に座ることを勧めた。
促されて椅子に座ったリイアが、ぼさぼさの髪を直そうともせず泣き喚く。
近所迷惑とも言えるぐらいの大声で泣きながら、チェルシーの肩を掴んでゆさゆさと揺さぶった。
「あんた、魔女なんでしょ!?魔女だったら…魔女なら、あたしを助けてくれるんでしょ!?」
それを止めようとアルスが動いたが、チェルシーの手に制される。
「落ち着け。何があった?」
それはまるで波ひとつ立たない水面のように穏やかに、優しく――。
思わずそこにいた者が息を止めて聞きいってしまうような声だった。