慟哭の彼方


「よかったのか?」

リイアが店を出て行った後、アルスは不思議そうに訊ねた。

願い事を変更するなんてサービス、普通なら彼女はやらない。


けれども彼女は満足そうに微笑んでいる。

「よかったんだよ。だって、最初に依頼された絵はまだ手をつけていないんだから」

「…え?」


彼女が取り出してきたのは、鉛筆の跡もない真っ白なキャンバスだった。

「あの子の願い事が変わることを、オレは望んでいた」

だから、手をつけなかった。

わざわざ手紙を出して拠り所を示すことで、彼女がここに来るよう仕向けた。


すべては魔女の手の内だった。


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