慟哭の彼方
「おっそろしい奴…」
軽く身震いするフリをしてアルスが呟く。
「あんな年で人生を見放してほしくなかった。結果としていい方に向かったのなら、それでいいんだ」
「それが報酬の代わり、ってか?」
けれどチェルシーが頷いたのを見て、アルスは頭を抱えてしまう。
「理解できねぇーっ。だってチェルはその願い事を叶えるために身を粉にしてやってるってのに…」
「魔法は使わなくても大丈夫だろう」
「へ?」
彼女は願い事の付け足されたノートを開く。
“笑顔が増えますように”
「だって彼女の願い事は、もう叶っているのだから」