慟哭の彼方
入ってきたのは、食料品の入った紙袋をぶら下げた青年だった。
赤みのかった茶髪に、アーモンド型の瞳。
かなりの美青年を思わせる。
彼を待たせないように慌てて願い事を言おうとして、しかしさっきの魔女の言葉が脳裏を駆ける。
もしあの噂が嘘だったと言うのなら、俺は何のためにここへ来たんだろう。
「…客?」
「そう、だけど」
なぜだろう、青年がやけに鋭い目つきで自分を睨んでくる。
背後で魔女のため息が聞こえた。