慟哭の彼方
夜が更ける頃、彼女は開いたままのノートを険しい目で見つめていた。
それを見ていたアルスが、暗くなった窓の外をぼんやりと眺めながら呟く。
「…それ、本当に叶えるつもりなのか」
依頼をした彼は気付いているのだろうか。
「それが、オレの仕事だからな」
もしもこの願い事が叶ってしまえば、取り返しのつかないことになると。
開いたままのノートの一ページ。
依頼人の願い事がすべて記されたノートには、こう記されてあった。
“絶対に嘘が、つけなくなりますように”
何とも幼稚な、しかしとても恐ろしい願いだった。