慟哭の彼方
本当にいいのか、と心の中で問いかける。
心配だった。
これが叶った後の彼の人生も、この願いを叶えることでチェルシーに負担がかかることも。
彼女は優しすぎる。
誰かの願いを叶えることで、依頼人が背負うべき悲しみもすべて共有してしまう。
「俺、チェルシーのことが心配だよ」
どれだけ彼女の心を揺さぶるような言葉をささやいても、彼女は微動だにせずキャンバスに向かうだけだった。
こちらを一切振り向かないまま、感情がこもっているのかも読みとれない声でこう言うのだ。
ありがとうと、ただ一言を。