慟哭の彼方


「それに、彼も…」

そこで言葉を止めたチェルシーに、アルスは怪訝な目を向ける。

けれども彼女は何も言わずそこで会話を止めた。


彼もまた、嘘をつき続けていた。

心の中で泣き叫んでいたはずだ。

言葉にはできないからと依頼の際、彼はチェルシーに一通の手紙を手渡していた。


自分はずっとハイゼルを騙してきたと。

彼の嘘に気付いていながらそれを黙っていたと。

その上で彼を利用していたと。

それはハイゼルよりも重い罪なのではないか……と。


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