慟哭の彼方


夕闇に染まる街のあちこちを、明るい照明が照らしだす。


笑いながら話し、歩いている人々。

この中の誰が嘘をついているかなんて、彼女に知る術はない。

けれども、全員が真実だけを話しているわけではないということははっきりとわかるのだ。


「誰もが嘘つきなのさ」


魔女のささやかな一言は、嘘と真実が混在する街の喧騒に静かに溶けた。


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