慟哭の彼方
「あなたが…魔女ですか?」
「何か不都合でも?」
「いえっ、そういうわけではなくて」
開けかけのドアに身を隠すようにして入ってきたのは、驚くほど美しい女性だった。
影のある美貌を備えたチェルシーとは違い、肩まで届かない程に短い髪は健康的な美しさを思わせる。
店の奥でチェルシーの絵を眺めていたアルスがいきなり2人の間に割って入る。
「えぇっ、う、嘘だろ…!?」
チェルシーには何が何だかさっぱりわからなかったが、女性の方はほんの少しだけ眉尻を下げて微笑んだ。