慟哭の彼方
口を金魚のようにパクパクさせた後、ようやくアルスが叫ぶ。
「マイラス!?あの有名女優の、ホーク・マイラスだろ!?」
「しっ。…静かに」
動揺してアルスを止めている所を見ると、彼の言っていることは本当らしい。
しかしテレビもほとんど見ず始終キャンバスと向かい合っているチェルシーには、有名女優と言われてもピンとこなかった。
その様子を見て、マイラスは安心したように小さく息をつく。
「おっしゃる通り、私の名前はホーク・マイラスです。けれども今回は女優の仕事には何の関係もない。
あなたに、噂の魔女に、願い事を叶えてもらいに来ました」
その眼差しは、鋭く揺るぎない。
いい目だ、とチェルシーは心の中で深く頷いた。