慟哭の彼方
ふと気が緩めば泣いてしまいそうだった。
そっとそっと、この感情が溢れださないように彼女は必要以上にゆっくりとペンをとる。
ノートを開こうとした手が止まる。
「チェル…」
アルスが心配そうな顔でチェルシーに歩み寄る。
壊れそうな彼女をそっと後ろから抱き締めれば、確かな温もりがあった。
「こんなのって、ない」
わなわなと震える彼女の唇が、心細そうに動く。
側で聞いていたアルスも自分の耳を疑った。
まさかあの人があんなことを口にするなんて。
彼女の願い事は、あの幼い女の子よりも2人の少年よりも深く、深く傷を作るものだった。