慟哭の彼方
だけど、そうすることもできなかったんだ。
妙に悟りきった声が店内に響く。
彼女の方を向くのがとても怖くて、再び視線を交えることができなかった。
目線が合わさった瞬間、彼女が風になって消えて行ってしまいそうで。
「とにかく描き上げるさ。…今まで、ずっとそうしてきたんだ」
この仕事を始めたのは最近のことではない。
何年も前から彼らはここにいて、ずっと人々の行く末を見守ってきた。
涙が出そうなほど優しい願い事も、殴りつけてやりたいほどひどい願い事もあった。
けれど、けれど。
「…ここまで悲しい願い事は、初めてだ」