慟哭の彼方
家に戻って来ても、マイラスはずっと感情の見えない瞳で天井を見上げていた。
ぐるりと部屋を見回したが、変わったものは何もない。
いいや、何も感じなくなってしまうほど変わりすぎているのだ。
そして自分はそれに慣れてしまっている。
広すぎる部屋、隅々まで指を滑らせても埃なんてどこにもない。
同居人がいるわけでもないのにここで一人。
一体何年前からいるだろう。
人気女優になって手にしたのは、非凡すぎる平穏。
多くの拍手喝采をもらっても、山のようなファンレターに目を通しても、重く沈んだ心は浮き上がらなかった。