慟哭の彼方


最初はただ、テレビの中の別世界の人たちに憧れていただけだった。

自分には目立つものは何もなかったけれど、どうしてもあの世界に行ってみたかった。


だって私は現実から逃げたかっただけなの。


心の中で呟いて、彼女は大きく息を吐く。

小学生の頃、クラスでリーダー格だった男子に嫌われていた。

彼が嫌いなものはみんなも嫌いだった、とても狭い世界。


枠の外に追い出されたマイラスは助けを呼ぶ勇気もなくて、ずっと黙っていた。

テレビの中で歌い、踊り、輝く演技をする女性たちが彼女の支えだった。


不特定多数の人に分け隔てなく与えられる光に、救われていた。


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