慟哭の彼方


息を切らしてドアを開けると、探さずとも銀髪の後ろ姿はすぐに見つかった。

その側に寄り添うようにして立つ、赤茶色の髪を一部分だけくくった青年も。


魔女の瞳がほんの少し赤みを帯びて見える。

その理由を考えて、マイラスは苦笑した。

きっと彼女は今まで泣いていたのではなく、これから泣くのだろうと。


「あなたに依頼された絵が完成した」

「…ありがとうございます」

差し出した手は震えていない。
いいや、震えてはいけない。



“チェルシーとアルス以外の人たちの中から、私という存在が消えますように”


それが、私の願いなのだから。


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