慟哭の彼方
実力なんてなかったから、頑張るしかなかった。
その努力を踏みにじられ、けなされて、それでも諦められなかった。
もうここから逃げれば戻れる所なんて無いから。
「だからもう、疲れちゃいました」
――息が、苦しい。
「…嘘だ」
低く不機嫌そうな声。
その顔色を窺おうとしゃがむと、彼女は不意に顔を上げた。
「嘘だ、それだけじゃないだろう。あなたは何かをオレに隠している」
胸が痛かった。
この時ばかりは笑っていられなかった。
彼女に自分の演技が通用しないことを、驚くしかなかった。