慟哭の彼方
口から出てきたのはなんて簡単な一言。
「もう、ダメなんです…」
チェルシーが彼女の肩に手を添え、精一杯の気遣いを見せる眼差しを向ける。
久しぶりに受け取った、無償の愛だった。
こんな親切心をもっと早くに知っていたなら、私は道を違えなかっただろうに。
「私の時間は、もうすぐ止まってしまいます」
婉曲的でわかりにくい表現。
けれどもアルスにはばれてしまったらしい。
それまで彼が静かに腰かけていた椅子が、派手な音を立てて後ろに倒れる。
「なん、で…」
その質問にも笑うしかなかった自分は弱くて脆くて、情けない。