慟哭の彼方


一度絵を見てしまえば依頼は取り消せない。

その忠告が頭をよぎる。


孤独だった世界の中で、誰かに甘えたかっただけなんだ。

人生で最後のお願いをしに行った店に優しい人がいたから、頼んでみただけ。


どうかあなたたちだけは私を忘れないでくださいと。

本当はわかっている。

この願い事が叶うことで楽になれるのは自分だけ。


願い事を叶える手助けをした彼女も、自分とろくに関わっていない青年も、私のせいで長い間苦しむことになるのだろう。


< 85 / 126 >

この作品をシェア

pagetop