慟哭の彼方


あぁ、段々呼吸が苦しくなってきた。

この店を出てしまえばマイラスに振り向く人はもういない。


時が止まる少しの猶予に与えられた、普通の時間。

普通が欲しかった。
普通に戻りたかった。


やっと、これで。


「さよなら」

さよなら、チェルシー。
さよなら、アルス。

最期に脳裏に浮かんだのは「あの人」の姿。



――さよなら、愛しい人。


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