慟哭の彼方
放心状態に陥りそうなチェルシーを庇って、アルスが彼女の一歩前で話に耳を傾ける。
「わからない。小さい頃にその人にひどいことをした気がする。いや、そうじゃなかったような気も…」
泣いても許されるのか、自分たちは。
そう叫びたくなるほどに彼の話はマイラスから聞いた話と辻褄が合った。
涙腺をぐっと引き締め、アルスは泣かないようにゆっくりと口を開く。
「さぁ、心当たりがありません。他の店に、行ってみては」
「そうだな…、そうするよ」
閉まって行くドアを見ながら、アルスは背後のチェルシーに問いかける。
「なぁ、あの人って…」