慟哭の彼方
どうしてこうなってしまったのか。
彼女は優しかっただけだ。
誰かを助けたいと思っただけだ。
誰かを助けるために自分を犠牲にすることなんてないんだ。
「チェル…っ」
その華奢な体が折れそうなぐらい強く力をこめて抱きしめると、彼女はようやく我に返ったようだった。
「アル、ス」
やっと彼の名前を呼び、少し距離を置く。
その距離に苛立つように彼の声も刺々しくなった。
「やめろよ、こんなこと」
言ってはいけないことだと、わかっているのに。