慟哭の彼方
忘れようとすればするほど、その存在は大きくなる。
2人にとって両親とはそういうものだった。
「親」という単語が、2人にはとても居心地が悪いものとして胸の中に落ちる。
親なんて、両親なんて、どこにいるのかさえわからない。
チェルシーとアルスは街外れの小さな孤児院で育った。
けれどもアルスは周囲に遠慮してしまってなかなか慣れることがなく、いつも周りの子どもたちから浮いていた。
「おい」
そんな彼に初めて声をかけたのが、チェルシーだ。