きゅんきゅん同盟


神様のばか。

せっかくあきらめようと決心したのに。

こんなことってアリ?


この『ドキドキ』と『きゅんきゅん』が、普通じゃないことは、確かなんだ。

だって、初めてだから。


こんなにも時間が止まったように、その瞬間が輝くことって初めてだった。


「ごめんね。大丈夫…あなたの方こそ…」


落ちたノートを、少し震える手で拾いながら、必死で言葉を探す。


何を言っていいのかわからずに、顔を上げると、もう彼はそこにはいなかった。



廊下で髪の毛をかきあげながら、友達と笑いながら話しているんだ。



さっきまで目の前にあった彼の顔がもうあんな遠く…


あ~・・せっかくのチャンスだったのに。

って・・・だめだめ!!


あきらめるって決めたんだった。



そう思いながらも、担任の先生からもらった名簿を見ながら、

彼の名前を…想像してる。


「りく~、今日カラオケいかね?」


廊下に響き渡る男子生徒の声に、ビクっとした。


「あ~、俺今日は帰る。また今度な。」



低いその声。



り・く・・・・って言うんだ。


ドキドキする気持ちを抑えて、落ち着いて名簿を見る。





< 13 / 258 >

この作品をシェア

pagetop