きゅんきゅん同盟


匂いでわかる。


誰かが私を抱えた。



間違いなく、彼の腕。



どうやら、運ばれている途中で意識を失ってしまったようだ。


夢を見た。

いい匂いのする陸のせいで、陸の夢を見ていた。



「目覚めたか?」


まだはっきりしない意識の中で、うっすらと目を開けると陸がいた。



「ごめん…私、反射神経にぶくて。」


その時、気づいた。



私の右手…しっかりと握られていた。



陸の両手にすっぽりと包まれた私の手。


「俺の方こそ、ごめん。ちょっとパスでかすぎた。良かった。目、覚めて。」



ホッとした表情で、私を見つめる陸。



「もしかして、ここまで運んでくれたの?」



「おぉ、ぎっくり腰になるかと思ったよ。ははは!うそうそ!軽くてびっくりしたよ。」



< 97 / 258 >

この作品をシェア

pagetop