お犬様あらわる
「どこ行ってたの!?
心配したんだから!!」
ギュッと抱き締めると榎藍も頬をスリスリする。それがくすぐったい。
「あぁ、もうくすぐったいよっ…。
あれ?なんでだろう」
ポロポロと目から滴が止めどなく落ちていく。
「クーン」
榎藍も心配そうに鳴いてあふれる滴をなめとる。
「なんで私…泣いてるんだ?
もう泣くことなんてないのに…。」
不思議なこともあるものだと、涙を止めるすべも知らないから私は止まるまで泣いた。