お犬様あらわる



「どこ行ってたの!?
心配したんだから!!」


ギュッと抱き締めると榎藍も頬をスリスリする。それがくすぐったい。


「あぁ、もうくすぐったいよっ…。


あれ?なんでだろう」


ポロポロと目から滴が止めどなく落ちていく。


「クーン」


榎藍も心配そうに鳴いてあふれる滴をなめとる。


「なんで私…泣いてるんだ?


もう泣くことなんてないのに…。」


不思議なこともあるものだと、涙を止めるすべも知らないから私は止まるまで泣いた。







< 37 / 59 >

この作品をシェア

pagetop