お犬様あらわる



離してという言葉のかわりに出たのは

ポタポタ落ちる涙だった。


「あれ?なんで私…」


人前で泣くなんて初めてだった。産まれた時もなかなかったらしいのに。


ただ涙が目から落ちるだけ。


「泣けばいいじゃん。菜刄は我慢しすぎなんだ。」


「うるさい。」


思った以上に声が弱々しかった。


「優しくすんな、ばか」


優しくされても何もできない返せない、

私は私を見失ってしまう


「菜刄は立派な人間だ。俺を拾って生きれるようにしてくれた。


菜刄は人間だ。」


「人間……?」


やめてくれこれ以上…。勘違いしてしまう、


私は必要とされていると



「俺の大好きな人間…。」














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