コンパスで作る地球
「じ…自分はどうなの?まさか自分もすぐに答えられないとかないよね?」
名前を聞く前に自分から名乗れってね。小5の子供にしてやったりの顔をする。
「ありますから。」
「じゃあ何が欲しいの?」
「兄です……」
下を向いてバツの悪そうな顔で答える男の子。
「えっ?もしかして一人っ子なの?ほぉー。まぁ兄弟居ないと寂しいもんか。」
「いいえ。兄は居ます。年の離れた。馬鹿兄貴が一人。」
「んっと?バカ…兄貴?」
急に男の子の口から出たヤリのような言葉。
「サッカー馬鹿なんです。勉強もせずに生まれてから18年間ずっと。きっと死ぬまでサッカーしますよ。あいつならね。だからそんな兄とは違って僕は新しい兄が欲しいんです!」
18年間って私と同い年かよ。てか別に一生懸命になれるものがあるのは尊敬するけど呆れるほどは…嫌になるか。
「何か君とは真逆のお兄さんなんだね。君は見た目勉強してそうだけど。」
「当たり前です。勉強して社会に出ないと。負けるなんて絶対に嫌ですから。」
大人顔向けな台詞。
「ふーん。まぁ勝ちたいよね…どうせ挑むなら。」
よくみんな道徳的な考えで勝ち負けは関係なくとか自分の思いを大切にとか勝負の前に言う。
ゆとり教育ともいうのか?
私はそういう言葉が嫌いだった。聞くたびに耳をふさぎたくなる。逃げ道とかは必要ない。別にそんな風な気遣いはゴミと同じ。
捨ててしまえばいい。
「それでお姉さんは?」
「えっ…は?」
「僕答えました。次はお姉さんの番です。」
あれ?何か喧嘩口調?まさかのこれも勝負?それは考えすぎ?