コンパスで作る地球



私が欲しいもの。


「コンパス…」


自分でも分かるぐらい小さすぎる声で呟いた。


「えっ……コンパス?もしかしてあの綺麗な円を書ける。算数の時間に使う?」


昔から思っていた。


「そう。私はもの凄く大きなコンパスが欲しいかな。」


この話をする気なんてなかった。これはただ私の考えというか。つまらない話なわけで。


「どのくらい?」


だけど私は話すことを続けてみた。途中で止めたりはしなかった。それは真剣に話した。だって男の子も真剣に聞いてくれてたから。


「自分より…東京の高層ビルより……バベルの塔より!」


「……そんなにも大きなコンパスを何に使うの?」


「それを使って。もう一つの地球を作る。」


「…。」


あぁ。引かれたかな?無言になる男の子を見て素直に思った。


さすがに小5だからって変な話だって分かるよね。コンパスで地球を作るだなんて。



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