コンパスで作る地球
[ピピピピピピピッ――]
「うぅ……」
布団のなかに蹲る私の耳に真っ直ぐと届く音。
その音は寝不足の私の頭にかなり響いてくる。
別にただ普通の目覚ましのアラーム音だけどね。
昨日は結局かれこれ寝たのは3時半過ぎだった。
「おはよ……」
すでにリビングの机には私の朝食が準備してあった。
「あら。紗耶香おはよう。ちょっと。やだ…髪の毛ボサボサよ。」
母親の言葉を聞いて近くにある鏡を見てみる。
これはなんと見事な寝癖。
「フフッ。あれみたいね。キューピーの頭って言うのかしら?にわ鶏のとさか?」
コップに牛乳を入れながら母親が言う。彼女は昔から物事を大げさに例える。
私と違って能天気な人。
食パンをかじりながら思った。もう少し母親の血が私にも入っていたらな。私だって何も気にせずに自由になれるんだろう。
どちらかと言えば顔ぐらいしか私と母親は似ていない。
「ふぅー。」
気を抜くとついため息が出た。
「コラッ紗耶香!朝早くからため息なんてついて。1日が悪くなるわよ。」
「えっ?あぁ…うん。」
「大丈夫よ。はい。コレ!」
母親から渡されたものは霧吹きの形をしたプラスチックみたい。透明だから中身が見える。よく分からないけど液体が入っている。
そして正面にはゴシック体の白字で“朝に素早く寝癖直し”と書いてあった。
「……ありがとう。」
きっと彼女の頭のなかでは私が寝癖に困ってため息をついたと理解しているのだろう。能天気さん。
「ほら時間ないわよ。」