コンパスで作る地球
「…。」
「…。」
「「「えぇー―ッ!」」」
[ガタカダッガタンッ]
本日3度目の懐かしきかつ古きリアクション。今回は尾田クンだけではなくてつい私も椅子をかなりの勢いで倒して立ち上がった。
「そんなに見られると…怖いんだけど。」
驚く私たち三人に対し平然と会話をする吉野クン。まるで何を今更って顔をしている。
「何でだよ?それ冗談?お前。中学の頃から俺と一緒でサッカーしかしてなかったじゃんか!何で俺はバカでお前は学年トッ…トッ…」
驚きと悲しみで尾田クンは上手く口が動けないらしい。ヒョロヒョロの声で問い掛ける。
「ふさげんな……俺はきちんといつも勉強と部活を両立してきたんだけど。」
「んなの初耳だぁー―ッ!てか嫌なんだけど!俺。まさかの友達が学年のトッ…トッ…!んっ俺!お前の見方がなんか変わりそうだ。気軽に話せないよ。」
随分とおしゃべりになった尾田クンが吉野クンに泣きじゃくる。
「別に普通に話せよ。」
私はその風景を未だに信じられなくて立ったまま。何から話せば良いのか頭の中を整頓している。
ずっと負け続けていた人がこの吉野クン。ずっと悔しい思いをさせられていた人が目の前の吉野クン?
何組?同じクラス。性別は男?女?普通に男。名前?吉野治斗?知ってるかどうかって?そんなの……ハハハッ。
今まさに打ち上げ中だよー―ッ!
……想像できるだろうか?こんな現実に巡り合ったことがあっただろうか?
憎き人が今。自分の目の前に。
さっきまであった謎が全部解けた。でも少しも晴れ晴れした気分にならない。逆にまた謎の何かが現れた気分。
「私!絶対に負けないッ!」