コンパスで作る地球



「悪い……先に帰る。」


尾田クンのしゃべる声は低く早口になっていた。さっきまでゆったりとしていたのに携帯が鳴ってから激変した。


「メール誰から?」


あんまり色んなことを聞くのは失礼だし迷惑だろうけど……素直に心配だった。


「…。」


だけど尾田クンは動きを止めて黙り込んでしまった。


「就也ッ!」


吉野クンも立ち上がり尾田クンの名前を大声で呼んだ。こないだと同じ。吉野クンの声がこの図書館に響きわたる。


「尾田クン?」


真子も心配そうに尾田クンを見つめている。


私もそんなことをするしか出来ない。今何を尾田クンが悩んでいるのか分からない。


「将也が……」


ボソリとやっと尾田クンの口から出てきたのは将也クンだった。


「将也がどうした?」


「……弟クンが?」


やっと出てきた将也クンの名前だけでは何も理解できないのは当たり前。吉野クンも真子も続きを聞き出す。


将也クンに何かがあったの?


将也クンが何かをしたの?


私たちが話している間にさっきまで少しは見えていた太陽も完全に落ちて本当の真っ暗な空になっていた。


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