コンパスで作る地球
吉野クンも真子も当たり前だけど未だにそこら中を捜し回っていた。
その二人からの電話。
「第三公園のベンチで一人で座ってたって。」
座ってたって……
「見つかったの?」
「あぁ。無事だ。」
全ての力が抜けた。何時間も掛けて捜し回った。
ちゃんと無事だった。
「よかっ…た……」
つい笑うことが出来た。安心して暗かった心も暖かくなった。無事だった。それが何よりよかった。
でも……
「…。」
尾田クンはさっきの表情とは変わらなかった。もう見つかったのに……やっと見つかったのに。
「…尾田…クン?」
何も喋ってくれない尾田クン。
怖いよ……急に黙り込まないでよ?こんな暗やみで。何か一言ぐらい喋ってよ!
やっと安心できたのに……尾田クンはどうしたのさ?
「ゴメン……二人とも俺んちに向うみたいだから……」
それだけ言うと先に歩きだしてしまった。
いつもの明るさや適当な調子の良さはどこにもない。
大丈夫って聞きたいけれど何とも近寄りがたい空気に乾燥した喉。一言も喋らずに尾田クンの家に着いた。