H・U・R 519
悟り
悟り


夏の終わり、静岡県のとある田舎の寂れた小さな寺で、ググ雄は坊主としてお勤めをしていた。
昨日までと打って変わり、境内を吹き抜ける風が涼しくなっている。
(今年も、なにもない夏だったなぁ)
ググ雄は儚い思いに囚われていた。
秋の足音を押し返せとばかりに、いよいよ蝉が最後の咆哮を、寺を囲む木々にこだまさせている。
(蝉だってあんな必死なのに、俺ときたら)
ググ雄はため息をついた。
(悟りとかどうでもいいから、セックスしてえ・・・)



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