りんごあめ
 それから私をこんなところに連れてきたんだとして、それはだれが?なんのために?とっ、とにかく、この倉庫から抜け出さなくちゃ……!

 手足を縛っているロープを解こうともがくも、きつく縛られたロープは解けない。

 刃物とかで切らないと、ロープは解けないか……。

 ふ……と、何気なく首を左に向けてみた。


「ッ!!」


 そこには、私と同じように椅子に座らされ、ロープで固定された、両目のない樹里がこちらに顔を向けていた。

 黒い空洞が私を見ている。声をかけたい。けれど、かけれない。

 バクッ、バクッ、バクッ……と、急激に心臓の音が大きくなったのが自分でも分かる。


 ――怖い。


 そこでようやく、自分のおかれている状況をすべて理解し、恐怖を感じた。
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