一度目、キス【短編】


 それに気付いたのか、唇を離した。銀の糸がお互いの唇にひいていた。息を切らしているからか、呼吸がしんどかった。


『…………ごめん』


 そう言って、私の身体を起こした。切なげな目をしていた。声は擦れるほど小さかった。


 結局、その日、月島は帰ってしまった。


 作りかけのシチューが残ってある。それを一応完成させたが食べなかった。食べれなかった。


 代わりに涙がまたぽたぽたと零れた。
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